A・O・I
「ただいま~!!蒼~今日はありがとね~!!めっちゃ助かった!!」
「おかえり~どー致しまして。ご飯出来てるよ~、先、お風呂入る?沸いてるけど?」
「お風呂、先入ろうかなぁ~。」
「あっ、いいの買ってあるんだ。ほら、これ……温泉の素。これで温泉旅行気分なれるよ。入れる?」
「えっ?温泉っ?!!」
「そう、温泉。」
「あ~……やっぱり、ご飯先にしようかなぁ………いい?」
「うん。い~よ?」
「ちょっと着替えてくるね。」
「は~い。」
明らかに動揺している硝子さんを見ると、段々楽しくなって来た。
「S気質あんのかも……やば。」
「あ~お腹空いた~!!」
「今日は和食だよ。お刺身新鮮なのあったからさ。」
「わぁ~美味しそう!!これ鰹?」
「そう、トロ鰹って言うんだって。脂乗ってるみたい。」
「食べよ!食べよ!ワサビ頂戴!」
「あっ!硝子さん!あんまり付けすぎちゃダメだよ?」
「うぅ~……ゴホッ辛っ!!んん~……でも、美味しい!!」
「ほらまた言った傍から...。」
美味しそうに顔を綻ばせる彼女を見ると、釣られて自分も笑っている事に気づく。
歳上の女性なのに、時折見せる無邪気な様子はまるで少女の様に可愛らしい。
俺が大人になったからか、最近は歳の差さえ縮まった気がしていた。
「ずっと忙しかったからさぁ、今度旅行でも2人で行こうよ。」
「えっ?ゴホッゴホッ……りょっ旅行っ?!!」
「うん、旅行。」
「どっどしうしたの急にっ?!!」
「急でもないよ。ずっと考えてた。硝子さんにプレゼントしたいんだ。ダメ?」
硝子さんは箸を持ったまま、固まっている。
ここ最近、あんまり目が合わなかった彼女の瞳を漸く捉えた。