A・O・I

「それだけじゃない!!……蒼……呼ばなかった理由はね………あのね………白状すると、うちの会社の女の子達に、蒼を見せたくなかったからなんだ……。」


「……俺、会社の人に見られると迷惑?」


ドンッと重い鉛が心臓に落ちたように、重苦しい気分に支配される。

この先の言葉を聞くのが怖い。


「違うよっ!!そんなんじゃなくて……。」


「だったら何で?」


「だから……その……。」


「硝子さん?」


畳の上で寝転がりながら、彼女は暫く沈黙した後、無理矢理口を開いた。


「あぁ~もうっ!!だから、嫌なのっ!!蒼狙いの女の子多いし、この旅行参加したら絶対蒼に群がるじゃない!!」


「えっ?」


予想外の言葉に軽くパニックになる。

全然頭がついて行かない。


「はぁ~…………なんか最近おかしいんだぁ。自分の気持ちがどんどん分かんなくなってて……時々、蒼から目が離せなくなる時があるし……やっぱり変だ……私。そんなんじゃダメなのに……親としてです確りしなきゃいけないのに.......。」


目を瞑ったまま、独り言のように喋っている硝子さんはやっぱりかなり酔っている様でたまに俺の存在を忘れている。


「フフフッ……やっぱ変だぁ...夢だからかな?」


「何が?」


「だって、蒼は自分の事、俺なんて言わないでしょ?フフッ……。」


「あぁ……確かにそうだね。」


動揺してすっかり忘れていた、ある時期から一人称が、僕から俺へと外では切り替えて話していた。

家では敢えて僕で通していたのは、変化を嫌った自分のあざとい思惑故だ。



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