A・O・I

「んん~……あぁ……もう朝?何時……?」


頭が痛いし、胃の調子も最悪。

だるい身体で寝返りを打ちながら、手探りで携帯を探していると、聞き慣れた声が聞こえた。


「6時半に、もう直ぐなるよ。」


「6時半かぁ~……朝ご飯何時だっけ?」


「7時から9時半までやってるみたいだけど。」


「そっかぁ……胃の調子悪いし、朝ご飯……私はパスだな。蒼は行って来ていいよ?」


「折角だし、飲物だけでも飲みに行こうよ。二日酔いには味噌汁だよ?硝子さん。」


手を引かれて漸く気がついた。


「あっあれっ?!!蒼?!なんでっ?!!えっ?!えっ?!」


「フフッ...気付くの遅いよ~。硝子さんの会社の受付の人が教えてくれてさ。内緒で来ちゃった。ダメだった?」


「ううん!!全然ダメじゃないよ!!何かごめん……ね?」


「何で話してくれなかったの?」


「いやそれがね?社員旅行って言っても名ばかりで、私達は接待みたいなもんだったから、参加してもつまんないかなぁって思ってさ……。」


「……それだけ?」


「うっうんっ!!それだけっ!!他に何があるって言うのよ。」


本心なんか言える訳がない、心臓の音が今にも聞こえてしまいそうに激しく脈打っている。

訝しげな表情で、それでも納得したのか、軽く笑って私を立ち上がらせた。


「一緒に行こう。」


「う……うん!!」


断わる選択肢は、今の私には全く残されてなく、二日酔いも一気に覚めた気がした。




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