A・O・I

朝食が用意されているレストランに着くと、大勢の家族連れが並んでいた。

大体が顔見知りなので、どうやらここの会場はうちの会社で貸切の様だ。


「わぁ~結構来てるね~。少し待つかも。」


「うん。仕方ないよ。硝子さん無理矢理連れてきたけど、体調大丈夫?待ってられる?」


「うん。大丈夫だよ!二日酔いはいつもの事だし……アハハハ…ハ.....。」


「俺、旅館とか初めてだよ。こんな風にして、ご飯食べるんだね?」


「まぁ、この形式はバイキングだからこんな感じだけど、いい旅館とかは部屋にちゃんと用意してくれるんだよ。部屋に露天風呂付きだったりするし。」


「へぇ~いいね。二人でゆっくり出来るんだ。」


「えっ?うん。まぁ、ゆっくりは出来るかな?移動は無いし。」


深い意味なんて無いのだろうけど、疚しい気持ちがある分、何か変な意味に聞こえる。


「あっ!!蒼君っ!!!やっぱり来てたんだぁー!!!」


後ろから黄色い声が響いて、美人揃いの受付の子達がドッと蒼に押し寄せた。

あっという間に囲まれて、私は端に追いやられる。


「はぁ~……やっぱりこうなるか……。」


バレてしまっては、ほとぼりが冷めるまで暫くは近寄れない。


「蒼も気が無いなら愛想良くしなくていいのに……全く。」


少し不貞腐れながら、列に並び直した。


「荒川さん、おはようございます。」


振り返ると啓介が浴衣姿で立っていた。

啓介も歳を重ねて、無意識に大人の男の色気を漂わせている。

蒼とは違う層の、大人女子がチラチラと気にしているのが分かった。


「あっ!おはようございます!!」




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