A・O・I
「何?悪い?」
「あんな顔が近くにずっと居れば、他に目が行かないのは分かるわ。」
「えっ?聞こえない!何?」
「いや、あれじゃ苦労するだろうなって思ってな。」
「そ~なの!!学生の頃なんか、追っ掛けして家に来る子もいたりしてさぁ~本当大変だったよ。」
啓介が飽きれたように鼻で笑う。
「何?そのバカにした様な笑いは?」
私は勢いよく啓介の肩を叩いた。
「バカにして無いって!痛いってっ!叩くなよ!そゆう所、変わってないよな?」
またからかわれた気がして、もう一発腕を振り上げた。
「その手に乗るか!!」
振り上げられた腕は、いとも簡単に受け止められた。
両腕を掴まれて無防備な状態に、一気に恥ずかしさが込み上げた。
「ちょっと!!離してよ!周り居るんだから!!」
「この状況で、そんな事言っていいのかなぁ~??」
ぐいっと引っ張られて、私は啓介の胸に軽く顔をぶつけた。
「わっ!!ちょっと!!」
抵抗しようと顔を上げると、今度は後ろに引っ張られた。
トンっと、背中に誰かの存在を感じて見上げると、厳しい顔した蒼が啓介を睨んでいる。
「硝子さんを困らせる様な事は、しないで下さい。」
「お見合い相手なんだから、少しくらいいいだろ?」
「少しもダメです。」
「お前に何の権限があるんだ?硝子はお前の物か?」
「それはっー」
「ちょっと!!何張り合ってんの?啓介もいい加減にして!!」