A・O・I
見るからに蒼を意識してるのは見え見えで、恥ずかしそうに、それでいて一生懸命にコミュニケーションを取ろうとしている。
それでさえ私にとって、見慣れた光景で、いつもの蒼いなら軽く受け流すか、上手く相手する筈なのに、今日は明らかに何かが違う。
蒼の方が面白がって、ちょっかいを掛けている様に見えた。
(もしかして…あの娘が蒼の?!!私に用事で、会社に通う内に彼女が出来てたの? )
見るからに若くて可愛い女の子。
蒼を目の前にして、一層キラキラと輝いて見える。
「そうゆう事か.....成程ね。」
いづれこうなる事は分かっていた。
だから理解しなければならない。
蒼が私以外の人を見つめる事も、笑いかける事も、愛情を注ぐ事も。
悲しむ必要も無い。
寂しく思う必要も無い。
分かっているのに、如何して私は今、虚無感に襲われてるのだろう。
「フッ...私ってこんなに心が狭かったんだ.....。情けな...。あ~どうしよう。」
思いっきり両手で、頬を叩く様に挟んだ。
「痛ったぁ~...........。確りしろっ!私っ!!」
私は蒼を背に、小走りに会社のカフェテリアへと向かった。
いつもの自分に戻る為に、私には今少し時間が必要だった。