A・O・I
社員旅行から帰って来て、数日経った。
明らかに硝子さんは、何をするにも上の空で、常に何かを考えて、頭を抱えている。
何を思い悩んでいるのかは、当然分かっている。
狡い賢い俺は、あの時、硝子さんを試した。
本当は悪いと思っている。
それでも、何も進展しない日常に、焦りを感じて何もせずには居られなかった。
「アイツだけが知っている、何かがあるって言うのか?」
「ただいま~。」
「おかえり。遅かったね?」
「えっ?そうかな?いつもの事でしょ?」
「いや、いつもより遅いって。」
時計を見ると、既に11時を回っていた。
いつもだと9時半~10時過ぎには帰って来てる筈だ。
「蒼さ、最近どうなの?」
「何?いきなり...フフッ。」
「知らばっくれるなら、単刀直入に聞くけど、旅行の時言ってた好きな娘とは、上手くいってんの?会ったりしてる?」
「フフッ...何?取り調べ?そんなに気になるの?」
「いいから答えなさいよ!!今日は会ったりしたの?!」
半ば怒り気味に俺を睨む硝子さんもまた、新鮮だ。
「今日?.....うん。毎日の様に会ってるけど?」
「まっ毎日?!!...........へぇ~.....そう。」
「いい娘だよ?とぉ~っても可愛いし。」
「確かに可愛かったな...あの娘。」
「えっ?」
「そっそう.....でも、珍しいじゃん。蒼からそこまで好きになる娘なんて。」
「そんな事ないよ。硝子さんが気が付かなかっただけだよ。」