A・O・I
そりゃそうだ、普通に考えたら未婚の娘にいきなりこんな大きい子供が出来たら、心配しない親はいない。
最初、硝子さんは俺を養子にと言ってくれたけれど、結局は、保護者という関係に落ち着いたのは、恐らく俺を引き取る条件だったのだろう。
今なら、そうゆう事も理解出来る。
だから今まで、硝子さんの実家には関わらない様に、気を使っていた。
それでも、いつまでもこのままの関係なのは、ずっと引っかかっていて、正直なんとかしたかった。
今回も無駄ったみたいだけれど。
「硝子さん、ご飯食べる?」
「うん。じゃあ用意しとく。」
「ありがと。」
硝子さんがお風呂に入って少ししてから、キッチンの鍋に火をつけた。
今日は寒いから、野菜たっぷりの温かいスープを作っていた。
前に硝子さんが美味しいと大絶賛だったスープ。
寒い時は、決まってコレを作る。
「後は、硝子さんが上がって来たらでいいか。」
カウンターに寄り掛かりながら、鍋の様子を伺う。
ポコポコと、沸騰した気泡が湧き出るのを見ながら、何も考えない時間が好きだった。
全ての煩わしい事から、一時だけでも開放される気がした。
「ヴーーーー.....ヴーーーー.....ヴーーーー」
「ん?あぁ、硝子さんの携帯か。会社からかな?...........後から掛け直せばいいか。」
暫く鳴っていたバイブ音が止まり、また鍋に視線を移した瞬間、またバイブ音が鳴り出した。