A・O・I
初めて訪問する硝子さんの実家。
都会の街並みから少し外れた所で、同じ都内と言えど、畑や木々の緑も多く、喉かな風景が広がっていた。
(硝子さんは、ここで育ったんだな.....。)
感慨深い気持ちと裏腹に、本当はこんな気持ちで一人
、来たくなかった。
住所の通り進んでみると、白い外壁に鉛色の瓦屋根の一軒家が見えてきた。
庭は綺麗に手入れされていて、玄関先には色とりどりの花が、テラコッタの鉢植えに植えられていた。
玄関の前に立って、インターホンを押す指が震える。
思い切って押したインターホンの電子音に、遠くで声が帰って来た。
「は~い!.....どちら様ですか?」
「あの.....突然訪問してしまって、すいません。僕は橘 蒼です。」
暫く沈黙した後、ゆっくりと玄関の扉が開いた。
驚いた顔をした初老の女性は、何処か硝子さんに似ていて、ドキリとする。
一歩踏み出して、俺の顔をじっと見ると、ニッコリ笑った。
「すっかり立派になったわね!硝子の所で会った時以来かしら?」
「はい。硝子さんにお世話になっているのに、長い間、礼儀も欠いたままで来てしまって、本当にすいませんでした。」
「フフッ...いいのよ。硝子の言いつけなんだろうから、あなたが気にする事はないわ。それにしても、今日は、どうしたの急に?硝子に何かあった?」
「あの.....」