A・O・I
「いらっしゃいませ~!!あらっお客さん...........家は初めてかしら?」
「はい...........いいですか?」
「もちろんですよ!どうぞ、一見さんならカウンター席へ。色々ご案内出来ますから!」
木の香りが新しい、店内のカウンター席に腰を下ろすと、目の前に大皿料理が並んでいた。
久し振りの家庭料理に、減ってないと思っていたお腹がグゥーっと小さく音を立てた。
「どれも美味しそうな物ばかりですね。」
「あら、嬉しいわ!」
親しみやすい、声と笑顔に、少しばかりの緊張が解けていく。
「店主の柴崎 小夜(しばざき さよ)です。これからご贔屓に。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。俺は、橘 蒼です。」
「素敵な名前ですね~!お客さんによく似合ってる。」
「...........ハハ...........そうですかね。初めて言われました。」
無意識に俯くと、瀬戸物の魚の箸置きが目に入った。
おどけた変な顔をしている。
「もしかして、気を悪くしました?私、何でも思った事口にしちゃうから...........ダメね。気を悪くさせちゃったらごめんなさいね?」
「大丈夫です。自分の名前は気に入ってたんです..........本当に。顔に似合わないですけどね...........。」
「えぇ?そう?とっても綺麗な青い瞳をしてるから、あおいって名ずけられたんだと思った!イメージにピッタリだもの!」
「えっ...........。」