sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
1.スーツの似合う男
恋ってなんだろう。
愛してるってなんだろう。
好きな人は私にもいるけど、その対象は家族や親しい友人に限っていて、特定の男性に強く恋い焦がれるという経験はない。
私の心は、なんだかいつも冷めているんだ。
恋愛をする機能が、生まれつき欠落しているのかな――。
*
私、藤咲千那(ふじさきちな)は常々そんな思いを胸に抱いて生きている。
だけど二十三歳ともなると心の方はともかく身体はすっかり成熟しているから、時々は男性と触れ合いたいという欲求はある。
それを満たすため、現在半年ほど付き合っている男性がいる。
今日も仕事終わりに彼の家に入りびたり、一度お互いの身体的欲求を満たしたあと。その彼とソファでリラックスしながら、私はテレビを眺めていた。
「今、スーツの最も似合う男性有名人だって」
たまたまついていた情報番組。そのテロップを音読し、ちらりと隣の彼に目をやる。
さっきの行為の名残で中途半端にはだけたシャツ、ボクサーパンツ、そしてなぜか靴下は身に着けたままという格好。
七月も後半に入って暑い夜だし薄着でちょうどいいかもだけど……正直、ダサい。
「今の祥平さんとは対極にいる人だね」
「……ん? なにが?」
「なんでもない」
私の吐いた毒にも気づかず、のんきに肩を抱いてくるこの男は岡田祥平(おかだしょうへい)。
私の働く会社の上司で、いちおう部長という肩書きを持つ。
三十七歳という年齢相応の優しさと余裕があって、恋愛に対してあまり情熱を傾けられない私に別段やきもきしたりもしない、その緩さがちょうどいい。
身長や顔立ちもいたって平均的だし、このマンションも広すぎず狭すぎず居心地がいい。
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