sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「ただいま」


その日帰宅してみると、いつもは出迎えてくれるはずのみーちゃんが珍しく来てくれなかった。手が離せない料理でもしているのだろうか。

首を傾げつつリビングダイニングに向かったけれど、部屋は静かでキッチンにも誰もいなかった。


「みーちゃん?」


たまにはみーちゃんだって外出することもあるけど、私の帰宅時間までいなかったことは今まで一度もない。一体どうしたんだろう……。

いつも元気な彼女だけど、高齢は高齢だ。家のどこかで倒れているんではなかろうかとトイレや浴室まで見に行ったけれど、どこにもその姿はない。

その後二階も探し回って、最後に残ったのは祖父の部屋だった。


「……ごめんねおじいちゃん。入りまーす」


あまり足を踏み入れたことのない祖父の部屋の扉を、おそるおそる開ける。

家で仕事をすることもある祖父の部屋には立派な机があり、ちょうどその机のそばにコードを出したままの掃除機が置きっぱなしになっていた。

祖父の部屋の掃除を許されているのはみーちゃんだけど、こんな中途半端な状態でどこへ行ったんだろう。

やっぱり何かあったのかな……?

とりあえず掃除機を片付けようと身をかがめると、何気なく足元にあるゴミ箱が目に入った。

そこには握りつぶしたように丸まった書類が突っ込まれていて、私のなかで何かが引っ掛かった。

皺が寄って読みにくくなっている紙の中に、【藤咲千那】の文字があることに気が付いたからだ。


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