sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「なんだろう」


誰かが捨てたものを盗み読みするのは気が引けるけれど、自分の名前を見つけて今さら見なかったことになんてできない。

私はゴミ箱から書類を拾ってカサカサと開き、その一番上にある文字を見て、息を呑んだ。


【藤咲千那さんに関する報告書】


こんなもの、誰が……。私は慌てて書類をめくり、最後の一枚に記された名前を見て愕然とする。


「どうして……」


そして、最初の書類に戻ってひとつひとつ報告の内容を確認していくうちに、胸にさざ波が立っていく。


【社長の危惧されている通り、彼女は恋愛に対してなかなか踏み込めない部分があるようです】

【ご両親との思い出がある東京タワーに行った際、やはり過去のことを思い出したようでしたが、取り乱した様子はなく、その後もデートを楽しむ様子が見受けられました】

【告白を促したてみましたが、あと一歩がまだ足りないようです。引き続き、経過をご報告します】


事務的な文章で綴られているのは、“彼”と過ごしているときの私の様子。その内容はかなり詳細にわたっていて、まるで丸裸にされている気分だ。

この報告書は、いったい……。嫌な予感しかしないのに、私は読むことをやめられなかった。

そして、先ほど名前だけ確認した最後の部分にたどり着くと、私は今度こそ自分の心が閉じていくのが分かった。


【少しずつではありますが、私に対して確実に好意をもってくれている実感がありますので、今しばらくお待ちください。社長の指示通り彼女に無事恋愛させることができた暁には、約束の報酬をお支払いいただきますので、よろしくお願い致します――――綾辻】



< 105 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop