sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
私は胸に手を当てて、少しの間考える。
詠吾さんの方はビジネスで私の機嫌を取っていたにすぎないのに、その事実を知った今もなお、彼をキライになることができずにいる。
みーちゃんのおかげで今はショックが和らいでいるけれど、たとえば彼とまた会社で会ったりしたら、この胸は痛み出すだろう。
そんな状態で、改めて彼の口から真実を告げられても、傷口に塩を塗るだけなんじゃないのかな……。
「……お祖父ちゃんのことはみーちゃんに任せるけど、詠吾さんのことは別にいいよ。あの報告書でだいたいのことはわかったから、わざわざ本人に問いただす必要もないし……もう、できるだけ関わらないようにしたい」
視線を床に落として心境を語ると、みーちゃんは小さくうなずいて私の気持ちを汲んでくれた。
「千那お嬢様……わかりました。でも、いつかショックから立ち直って、やっぱり彼をとっちめたいとなったときには教えてくださいね。私も一緒に殴り込みに行きますから」
「うん。……ありがとう」
みーちゃんは目を細めて微笑み、重苦しい雰囲気を払拭するような明るい声を出す。
「さて、じゃあ元気の出る夕食でも作りましょう。今夜は遅くなってしまったから急がないと」
「私も手伝う。何かしていた方が気がまぎれるし」
「ありがとうございます。じゃあ二人でごちそうを作って、旦那様の秘蔵ワインでも勝手に開けてしまいましょう!」
私たちは意気揚々と階下に降り、「男って生き物は……」と口々に愚痴を吐き出しながら、料理に勤しんだ。
そして準備が整うと祖父が大事にしている高級ワインで乾杯し、そのあまりの美味しさにあっという間にボトルを空にしてしまう。
結局祖父は深夜になっても帰ってこず、酒量はどんどん増えていき、その夜はみーちゃんと二人でいつの間にか潰れてしまった。