sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
7.軋むココロ
国税査察官の頼み
祖父は翌日も家に帰ってこなかった。
みーちゃんは「私たちに糾弾されるのを察してわざと帰ってこないんですかねえ」なんて言っていたけれど、忙しい祖父は帰宅しない日が多々あるため本当のところはわからない。
どちらにしろ、あの報告書の件は宙に浮いたまま、週末の金曜日を迎えた。
定時を過ぎ、次々同僚たちがオフィスを出ていくなか、円美さんが私のデスクに近寄ってきた。
「千那ちゃんこのあと時間ある? ゆっくり飲みにでも」
「すみません。特に予定はないんですけど……そんな気分になれなくて」
帰り支度を整えながら丁重にお断りして、私は椅子から立ち上がる。
「そう。綾辻弁護士と何かあった?」
「……はい。もうちょっと立ち直ったら話しますね」
「わかった。……あんまり思いつめちゃだめよ?」
「ありがとうございます。じゃあ、また。お疲れさまでした」
無理に聞き出そうとしない円美さんの優しさに感謝しつつ、私はそそくさと会社を出た。
そして外を歩き出してすぐ、こちらに歩み寄ってくるヒールの音に気が付く。