sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
予想外の話だったけれど、私は素直に頷いて凛さんについて行った。
凛さんのような査察官が動くほどの悪質な脱税って、その犯人はきっと一般社員じゃないよね。
まさかとは思うけど、祖父が……? 凛さんが社長の孫である私にこうして会いに来たっていうことは、そういうことなの?
不安を抱えつつやってきたのは、隠れ家風のカフェ。間接照明の柔らかい明かりの中、従業員に通されたのはテーブルごとにカーテンで仕切られた半個室の座席。
これなら大事な話を誰かに聞かれたりすることもなさそうだ、と店の雰囲気を観察していると、凛さんが慣れた様子で二人分のコーヒーを頼んでくれた。
従業員が席を離れると、さっそく凛さんが切り出す。
「それで話の続きだけど、私たちが目をつけているのは副社長の瀬川晴馬。彼が数年前から巨額の脱税をしているらしいって、不審に思った詠吾が私に相談してきたの」
「副社長が……」
凛さんの口から出たのが祖父の名でないことにはほっとしたけれど、代わりに浮上した人物に驚いて目を瞬かせる。
彼にはこの間危険な目に遭わされそうになったしあまりいい印象は持っていないけれど、まさか脱税に手を染めているだなんて……。
「でも、なかなかやり口が巧妙みたいでね、決定的な証拠がないのよ。だから、この間詠吾の家に行って情報交換を。あのときは二人の邪魔をしてごめんなさいね?」
「いえ……」