sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
向こうはお芝居だったのに、こっちは泣くほど本気になってしまったなんて、滑稽だよね。
詠吾さんも、腹の中では笑っているのかな。それとも、もうお金のことしか考えていないのかな。
勝手に彼の思考を想像して胸を傷める私に、彼は静かに聞き返す。
『千那……それ、本当に?』
「……はい。私は、あなたのことが好きです」
頼りない声で伝えると、詠吾さんは電話の向こうでなぜか深く息を吐き出した。
もしかして、ため息をつかれた? ビジネスなのに本気になりやがってって、私のことが面倒くさくなった?
私は完全に後ろ向きなことしか考えられなくなっていたけれど、次の瞬間耳に入ったのは、予想外の台詞。
『やばいな。……今すぐ、千那に会いたくてたまらない』
何かを我慢したような彼のかすれた声に、一気に頬が熱くなった。
「え……?」
『会って、この腕に閉じ込めて……キスしたい。何度も』
甘く強引な台詞が鼓膜を震わせ、彼への気持ちがよりいっそう募っていく。
でも、忘れてはいけない。これは、私の気持ちを彼に向かせておくための演技なのだ。
それでもいいから……彼の言動はまやかしだとわかったうえで電話を掛けたのは自分なのに、切なさに押しつぶされそうになる。