sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


私は何か大きな塊を呑み込んでしまったように苦しい胸元に握りこぶしを置いて、きゅっと下唇を噛んだ。

黙ったままでいる私に、詠吾さんが気遣うように話しかける。


『……千那? やっぱり、何か悩んでるんじゃないのか?』


……悩みなら、あります。その原因はあなたですって、泣き喚きたいのを我慢して、私は一度深呼吸をした。

今は、騙された振りをしてるのが一番いい。これ以上傷つかないためには、きっと。


「……大丈夫です。もう、切りますね。ごめんなさい詠吾さん、忙しいのに時間を取らせちゃって」

『そんなの別にいい。……また、連絡する。今度は俺から』

「はい。待ってますね。それじゃ、おやすみなさい」


長く話せば話すほどきっと後ろ髪を引かれるから、早く切ってしまおう。そんな思いから無意識に早口になってしまう私。

それなのに、詠吾さんはゆったりとした口調で、私の耳に最後の甘い囁きを吹き込んだ。


『おやすみ、千那。……好きだよ』


そうして電話が切れると同時に、私はこみ上げる涙を止めることができなかった。

ねえ、詠吾さん。本当はこれっぽっちも気持ちがないくせに、私の心にこんなにもあなたへの愛しさを刻み付けて、どうするというの?


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