sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「詠吾さんのばか……」
そんな罵り言葉をこぼして涙を流しながら、ベッドから降りて窓辺に立つ。
そこから眺めた空にはあと少しで満月になりそうな、ふっくら太った月が青白く光っている。
手にしていたスマホで月のこよみを調べると、満月になるのは二日後だとわかった。
二日後……ちょうど、私が凛さんに依頼された計画を実行する日だ。
祥平さんに頼まれて詠吾さんを罠にかけた、あの新月の夜とは全く逆。
今度は、祥平さんを罠に掛けるんだ。私に、できるのかな……。
そこまで考えて心細くなると同時に、ふいによみがえったのは凛さんの言葉。
『詠吾は強く反対していたけど――』
……凛さんに対してまで私への思いを偽装するなんて、用心深いひと。
どうせあとで捨てるつもりだったなら、私がどうなろうと構わないはずでしょ?
胸の内でいくら責めても、彼には届かない。
月の光に照らされた頬に、再びあふれてきた涙が透明な線をいくつも描いた。