sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「千那ちゃん」
詠吾さんのことで頭がいっぱいになりかけていた私だけど、祥平さんの声で我に返る。
すると、彼の手がそっと私の左手を握り、いつの間に取り出したのか、ダイヤの指輪を薬指に嵌めようとしていた。
え? え? なにこれ? こんなの、まるで――。
「きみが僕と結婚するって約束してくれたら、僕は副社長を裏切る。洗いざらい、彼の悪事を話してあげるよ」
な、なんですって? まさか、祥平さんが、そんな交換条件を用意していたなんて……。
呆気に取られて固まる私に、祥平さんは強引に指輪を嵌めさせる。そして、私の耳元に唇を寄せて妖しくささやいた。
「もしも、婚約を受け入れてもらえないようなら、真実は闇の中。それどころか、社長は破滅するかもね」
「……どういう意味ですか?」
「副社長ってホント狡猾な男でさ。自分のしたことの罪を、丸ごと社長になすりつけるつもりなんだ」
なにそれ……! つまり、脱税の件を、祖父のせいにするってこと!? 許せない……。
「そ、そんなの、調べたら本当のことがわかるに決まってます!」
「それがさ、社長を貶めるための偽物の証拠も準備済みなんだよね」
「ひどい……! その証拠って、いったいなんなんですか? どこにあるの?」
思わず祥平さんを睨みつけると、彼はわざとらしく手で口をふさいで不敵に笑った。
「ちょっと喋りすぎちゃったね。……この先を聞きたければ、さっきの条件を呑むしかないよ?」