sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
……どうせ、詠吾さんとの未来はないのだ。だったら大切な家族である祖父を助けるために、自分の心を殺したっていいじゃない。
きっと、誰も、悲しまない。
そう思うと自分でも驚くくらい静かな気持ちになった。まるで、恋を知らなかった頃の冷めた自分に戻るようだった。
そうだよ。私、もともと一人の男性に熱くなるタイプじゃなかったじゃない。
詠吾さんと出会う前は、祥平さんとの結婚だって、考えてないわけじゃなかった。
詠吾さんと出会わなければ……。
胸の内で葛藤を続けていると、再びテレビの方が騒がしくなった。
……私のことをまた面白おかしく話して、共演者を喜ばせているのだろうか。
恨めし気に見つめた画面の中では、生放送中だというのになぜか私物のスマホを手にしている詠吾さんがいた。
『……じゃあ、今から、彼女に掛けますね』
そうしてスマホを操作し、耳に当てた彼。その脇で、司会者が顔をしかめながら呟く。
『しっかし、俺が彼女やったらこんな色男のプロポーズ信用できひん。金持ちで頭よくて顔もスタイルも完璧のスーパー売れっ子弁護士先生なんかが自分に本気になるわけないってな』
プロ、ポーズ……?
その言葉に目を瞬かせたのとほぼ同時に、部屋に着信音が鳴り響いた。出どころは、私のバッグの中。
それに対応するように、テレビの中では呼び出し音が鳴っていて、詠吾さんが電話の相手をずっと待っているところだ。
じゃあ、この電話ってまさか……。