sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「……はい」
『よかった。今、家? もし誰かといるなら一人になって欲しいんだけど』
……なんて答えればいいだろう。
隣にいる祥平さんに視線を送ると、彼はソファの上で急に私の背後に身体を入れてきて、後ろから抱きしめてきた。
お腹に腕を回され、空いている方の耳に触れた唇が、内緒話のようにささやく。
「一人で家にいることにしていいよ。でも、プロポーズはちゃんと断ってね?」
祥平さんの穏やかな言い方に逆に狂気を感じて、寒気が走る。
でも、今の私は彼の言いなりになるしかない。
祖父のため、会社のために、私が婚約すべき相手。それは詠吾さんじゃなく、祥平さんなのだから。
「家にいます。……自分の部屋で、ひとり、です」
操り人形になったような気持ちで、私は淡々と告げる。テレビの中で、詠吾さんがホッとした表情を浮かべていることに、胸がぎゅっと痛くなる。
『今日は、大事な話があってさ……実は今、いつも出させてもらってる番組の生放送中なんだけど』
詠吾さんの言葉が途切れると、すかさず逆の耳に祥平さんの声。
「……今、まさに番組を見ていること、正直に言うんだ」
自分の意思なんか少しもない会話を続けなければならないのが苦痛だけれど、逆らうわけにはいかない。