sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
私は目を閉じることもせず、人形のように横たわって祥平さんのキスを受け入れていた。
そうして言ったん唇が離れ、さっきより幾分興奮気味に息を荒げた祥平さんが、再び唇をかぶせてきた瞬間だった。
――ピンポーン。
突然部屋のチャイムが鳴り、祥平さんの動きがぴたりと止まった。彼は居留守を使うつもりなのか黙って息を殺していたけれど、そのうちドンドン、と乱暴に玄関のドアを叩く音がした。
「岡田さーん、ご不在ですか? 国税局の者ですけど!」
その声は聞き覚えのある女性のもので、私はハッと我に返った。
……国税局って、凛さんだ。もしかして、私を助けに来てくれた?
玄関の方を向いて期待の眼差しを送るけれど、祥平さんは鼻で笑って、私の頬にキスをした。
「国税局ったって、一般市民の家に無理やり入ってくるのは不可能だ。気にしないでいいよ千那ちゃん、続けよう。……僕たちは夫婦になるんだから」
満足げに微笑んだ彼にぞっとして、私は祥平さんから顔を背けた。
凛さんという第三者が現れたせいなのか、殺していたはずの感情が戻ってくる。
たとえ詠吾さんとの未来がなくたって、この人と結婚するのはいや。好きでもない人と一緒になるなんて、やっぱり間違ってる。
でも、祥平さんの言うとおり、鍵のかかった部屋に無理やり入るなんてこと、できないだろうし……。
悲観的になってぎゅっと目を閉じた、そのときだった。