sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「突入ー!」
玄関のドアが開いた音がして、凛さんが声を張り上げる。
廊下を忙しく駆けてくる足音に驚いている間に、彼女は私たちのいる部屋までたどり着いた。
「なっ……どうして」
リビングに現れた凛さんの姿に、祥平さんがうろたえる。
パンツスーツ姿の彼女は手にしていた鍵を目の高さに掲げて勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「ちょっとばかり管理人の同情を引いただけよ?」
「不法侵入だ。出て行ってくれ」
「すぐに出ていくわよ。彼女を解放してくれたらね」
強い眼差しで祥平さんを睨みつける凛さん。私はふたりのやり取りをはらはらしながら見守るしかできない。
「解放?……そんな必要はない。彼女は僕の婚約者だ」
祥平さんは冷たい笑みでそう言うと、私の手を取り指輪をはめた左手薬指を凛さんに見せつけた。
私は凛さんに助けを求めるような視線を送り、本当はいやなんだと伝えるように、小さく首を横に振る。
それを見た凛さんはかすかに頷き、怒りを滲ませた瞳で祥平さんを見据えた。
「……あなたって本当に瀬川にそっくり。人の気持ちがわからないところも、この変な香りで女の子を苦しめるところも」