sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「どうした、じゃないわよ! 彼女に聞いたわよ!? アンタ才門社長のお金に目がくらんで彼女の心弄んでるそうじゃない!」
わー、凛さん! 核心に触れるの、早すぎです!
私に詠吾さんの声が聞こえることはないけれど、思わず助手席で耳を塞いでしまう。
果たして彼はあっさり「そうだよ」と認めるだろうか。それともこの期に及んで「何かの間違いだ」としらを切るのだろうか。どちらにしろ、ショックだけど……。
しばらく外界の音を遮断すること数分、凛さんにトントンと肩を叩かれ、仕方なく耳から手を離して顔を上げる。
「……詠吾が話したいって」
「で、でも……」
「ごめんね、私そういうハッキリしないの嫌いなの。もしアイツがひどいこと言ったりしょーもない言い訳で逃げようとしたら、私がボコボコにしてあげるから、話だけでも聞きなさい」
前かがみでハンドルに身を預けた凛さんが見守る中、なかば強引に押し付けられたスマホを、おそるおそる耳に当てた。
「あ、あの……」
『千那……? ごめん。本当のことはもう少しあとで俺の口からちゃんと話す予定だったんだけど、何か騙していたみたいになって悪かった』
申し訳なさそうに語る詠吾さんだけど、特に言い訳をする様子はない。
どう受け取ったらいいのか戸惑って私が黙っている間に、詠吾さんは続ける。
『でも、千那はたぶん少し誤解してると思うんだ。それをきちんと説明したいから、明日の朝イチで千那に会いに行っていいかな?』
誤解……? 私が一体何を誤解しているというの。
知りたいような、知りたくないような、複雑な感情がせめぎ合う。
でも、凛さんの言う通り、ハッキリしないままなのもよくないと思うし……いい加減、覚悟を決めなくちゃ。