sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


私がおとなしくなったのを見計らい、詠吾さんはベッドに立てかけるようにして置いてあったビジネスバッグを手に取って開けた。

そして中からA4サイズのクリアファイルを取り出し、数枚の書類を私に差し出す。


「お手伝いさんに聞いたよ。千那がこの中身を読んだって」


お手伝いさん……みーちゃんのことだ。

ちら、と一瞬だけ書類を見たけれど、すぐに目を逸らす。これがあの時の報告書なら、もう二度と見たくない。

私はあのときのつらさを思い出し、布団の上でぎゅっとこぶしを握り締めた。


「それを聞いて改めてこの報告書を読み直したら、自分でびっくりしたよ。これだけ読んだら、どう見ても俺千那を騙してる悪い奴じゃんって」


……何をしらじらしいことを。自分で書いたくせに、“びっくりした”だなんて。

無言で彼を睨みつけると、むくれた頬をむにっとつままれた。

咄嗟にその手を払いのけたけれど、むきになる私をクスクス笑う彼はいやに落ち着いていて、どうも腑に落ちない。

怪訝そうに眉を顰める私に、彼が問いかける。


「千那が引っ掛かってるのは、“報酬”の部分だろ? 俺がきみに近づいたのは、お金のためだったんだって……そう思い込んでショックを受けた。違うか?」


その通りです、と思いつつ、今の彼の言葉には何か違和感があった。

“そう思い込んでショックを受けた”――ということは、真実は違うの? でもそれ以外に、どう受け取れって言うんだろう。

あんな報告書、祖父と詠吾さんの間に怪しげなお金のやり取りがあるとしか思えないじゃない。


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