sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
……そんな。そんな、夢よりも都合のいい展開があるわけないじゃない。
彼の言葉を鵜吞みにできず、疑いの眼差しを向ける。
けれど、彼はどこまでもまっすぐな瞳に、私を映す。
「千那を花嫁にしたければ、きちんと恋愛をさせること。……それが才門社長との約束だったんだ」
ゆっくり、言い聞かせるように紡がれた言葉が、ひとつひとつ心に落ちていく。
そう……確かに詠吾さんは、私に教えてくれていた。
恋の入り口から、デートの楽しさ、触れ合うぬくもりのあたたかさから、締め付けられるような胸の痛みまで……。
じゃあ……彼の言う“誤解”はこのことだったんだ。報酬は、お金なんかじゃなかった。
詠吾さんは、今までずっと私を……。
ようやくそのことを理解した瞬間、胸に熱いものがこみ上げ、あふれる涙で視界がゆらめいた。
「……っ。じゃ、わたし、ずっと、勘違い、して……っ?」
「いや、悪いのは誤解させた俺だよ。ごめんな」
嗚咽を漏らす私の後頭部をそっと自分の胸に引き寄せた詠吾さん。
濃厚なバニラの香りに包まれてますます涙腺を刺激されてしまうけれど、詠吾さんはそんな私を安心させるように強く強く抱きしめてくれた。
「……とはいえ」