sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
みーちゃんの皺だらけの目元にさらに皺が寄り、そこからじんわり涙がにじむ。
「自分はこのまま一生いかず後家(ごけ)でいるものだと思っていましたのに……まさかこんな歳になって結婚することになるなんて」
「いかず苔?」
「“売れ残り”ってことです。それでも旦那様と千那さまのおそばにいられれば幸せだと思っていたけれど……やっぱり、わかりにくいあの人に確かな言葉をもらえるとるうれしいものですね。といっても、遠まわしでしたけど」
呆れたように笑うみーちゃんだけど、本当に幸せそう。
だって、今までも好きな人と一緒に住んでいたのに、その役割は家政婦だったんだもんね……。祖父がそう望んだからとはいえ、二人とも何十年もよく我慢できたな。
そう思った直後、私は気付いてしまった。
二人がなかなか一緒にならなかったのは、きっとこの家に私がいたからなんじゃないだろうか。
祖父は、社会人とはいえ家事のひとつもしたことがない私を心配していたに違いない。それで、私がお嫁に行くまでは……って、みーちゃんへの気持ちを抑えていたんだ。
そこまで思い至ると、急に申し訳ない気持ちが押し寄せる。
「ごめんなさい……お祖父ちゃんのプロポーズが遅かったの、きっと、私のせいだよね。親でもない二人にずっとお世話になりっぱなしのうえ、恋の邪魔までしていたなんて知らなかった。本当にごめん」
しょんぼり肩を落とす私に、みーちゃんは静かにこんな話を聞かせた。