sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「今まで黙っていましたけど、旦那様は、ずっと悩んでいました。千那様からご両親を奪ってしまったのは自分だと。事故の日、ご両親二人を呼び出したのはほかでもない旦那様で、彼の元へ向かっている途中の事故だったから……」
それは初めて知らされる事実だったけれど、今さら祖父を恨んだりする気持ちが湧くことはない。
むしろ、あれから長い年月が経つというのに、ずっとそのことで祖父が悩んでいたのかと思うと、そちらの方に胸が痛くなった。
「だから、お祖父ちゃんはずっと私の面倒を……?」
確かに、両親がいなくなったのは悲しいし寂しかった。
でも、祖父は私にこの歳まで何不自由ない暮らしを与えてくれた。みーちゃんという話し相手だっていたし、就職口だって紹介してもらった。
しかも、才門ホテルなんて、超一流企業。いちおう試験は受けたけれど、採用されたのは九割がた祖父のコネだろう。
「ええ。千那さまを孫として可愛がる気持ちが第一にあるのは当然ですが、この子にこれ以上の不幸を味わわせたくないという思いが強くあったからだと思います。だから、千那さまが大切な人を見つけて結婚するまで、自分の幸せを追うこともできなかったのでしょう。でもそれは、千那さまのせいじゃありません。あの人の心の問題ですから、大丈夫」
ね、と優しく肩を叩かれて、私はその言葉に甘えさせてもらうことにした。
時間はもう戻せないのだから、祖父とみーちゃんのために、私もめいっぱい、幸せにならなくちゃ。