sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
9.sugar days
私は大丈夫
――翌週の日曜日。
私は詠吾さん、それから祖父とみーちゃんも一緒に、家から車で三十分ほどの場所にある霊園を訪れた。
天気は快晴で、タクシーを降りるなり、目がくらむような日差しと蝉時雨に出迎えられる。
まるで公園のように緑あふれる広大な敷地のなかに並ぶ、いくつもの墓石。
私たちはそのなかの一つ、西洋風の背の低いお墓の前で、足を止めた。
「……今日は、千那が来てくれたぞ」
そこでともに眠る父と母に向かって、祖父が語り掛ける。
ここ最近、副社長の件でずっと疲れた顔をしていた祖父だけど、その横顔は晴れやかだ。
私はみーちゃんと一緒に管理事務所で借りてきた道具で掃除をして、お花を飾り、最後に祖父が火をつけたお線香を香炉に立てた。
私はゆっくりと墓石の前に歩み寄り、両手を合わせる。
目を閉じれば父と母の姿がまぶたの裏に浮かび、色々な思いが交錯する。
幼い頃は、ただ寂しくて、両親がいない自分の境遇を恨むこともあった。
時間が経つにつれその気持ちは薄れていったけれど、代わりにちょっと捻くれて、人を愛せなくなってた。
それでもここまで成長できたのは、私を支えてくれる、周りの皆のおかげ。
それに気づくことができたから、私はもう大丈夫。
たくさん心配かけたと思うけれど、千那は今、とても幸せです――。