sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
二度目の甘い罠
その後、詠吾さんと一緒にやってきたのは、私たちが初めて出会った、ホテルのバーラウンジだ。
まだ夜には少し早いため、窓の外に広がるのは夜景でなく夕暮れに染まりかけた街だけれど、私たちは一杯ずつカクテルを頼んで乾杯した。
あの時は彼を罠に掛けるんだって意気込みすぎて空回りして、お酒こぼしたりしたっけ……。それが今ではカウンター席で、恋人として肩を寄せ合っているんだから不思議だ。
「ここで初めて会った時の千那、すごい無理してたよな」
私にとっては恥ずかしい過去だけれど、詠吾さんは愉快そうに当時を懐かしむ。
「あれは……忘れてください」
「最初は俺さ、誰かが俺をハメようとしてるって知ってすげえ腹立ったんだ。その“誰か”の手先となって動く初対面の女にもイラついたし」
初めて語られる、あの夜の詠吾さんの心境。
そういえば、彼が私を好きになったのはあの夜からだと言っていたけれど……最初は苛立っていたんだ。いったいどんなタイミングで私に惹かれたんだろう。
「でも、その女がどうにも大根役者で、なんかだんだん可愛くなってきてさ」
ちらりと意地悪な視線を向けられ、私はツンとそっぼを向いて、カクテルを口に流し込む。
大根役者だなんてひどい。あれでも私なりに必死だったんですからね。