sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「……すいませんね。演技力なくて」
口を尖らせて拗ねる私の後頭部を、大きな手がぽんぽんと撫でる。
「いや、そこが可愛かったんだって。……まあそれでもまだその時点で抱く気はなかった。部屋についていく振りだけして、あとは“俺を敵に回すと痛い目見るぞ”ってことだけ釘を刺して帰ろうと思ってたんだ」
……なるほど。記憶の中の詠吾さんは、確かにそんな感じだった。
途中までその気になってる振りして、急に態度が豹変したんだ。でも、その少し後でまた彼の様子は変化した。あれは確か、私が才門勝美の孫だと告げてから……。
「実は、千那と出会う少し前から社長とは親しくしててさ。時々、孫娘の話を聞いていたんだ。幼い頃に両親を亡くしたせいか、他人に必要以上に心を開かない子だと。年頃なのに恋愛のひとつもしていないようだし、このまま誰のことも愛さない人生だったら可哀想なんじゃないかと、社長はひどく悩んでいたよ」
「そう、だったんですか……」
あの夜、詠吾さんが『聞いてた通りだな』と言ったのは、祖父から私の話を聞いていたということだったんだ。
祖父は私が思うよりずっと、私のことを心配していたんだな……。