sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「いくらテレビ用のコメントだからって、カッコつけすぎじゃないですか?」
じろりと睨んだ先の彼は、テレビとは違う、少し乱れた前髪をかき上げて意味深に微笑む。
「そう? 別に脚色したつもりもないけどな。千那を口説くのは俺の趣味だから」
「そ、そーですか……」
恥ずかしい台詞をサラッと言われて、思わず顔を背けた。
一緒に住んで一か月になるというのに、未だにささいなことでドキドキしてしまう。
詠吾さんだって照れてる私に気付いているはずなのに、もっとくっつけと言わんばかりに肩を抱いて身を寄せてくる。
うう、触れ合っている場所が、熱い……。何か、話題を変えよう。
「そういえば。……祥平さんから詠吾さんの仕事場に電話があった時って、なんの話だったんですか?」
あれは確か、詠吾さんが入籍を発表してすぐの頃のこと。
帰宅した彼がすぐに『千那の元上司から事務所に電話があったよ。まぁ大したことじゃなかったし二度とかけるなって言ったからもうないと思うけど』と話していたのだ。
その時は深く聞かなかったけれど、いったい何の用だったのかは気になる。
「ああ、あれか。あの男、どうにかして俺や千那に仕返ししたいらしくて、千那のことを本気で婚約破棄で訴えようとしていたんだ。その相談を、あろうことか俺にしてきてさ」
「ええっ!」
詠吾さんは軽い調子で話しているけれど、私には衝撃だった。
そういえば、彼と最後に会った夜、『訴えてやる』みたいなこと吐き捨てていたっけ。
あれって、本気だったんだ……。