sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
頭の中がたくさんの疑問で占拠されはじめるけれど、私はとりあえず足掻いてみることに決めた。
もともとこれが怪しすぎる“接待”だということ向こうも承知だから、用心するに越したことはないとカマをかけて、こっちの反応を見ているだけかもしれない。
「……何を言っているのかわかりません。私は、これからうちの会社に貢献してくださる綾辻先生を、丁寧におもてなしするようにということだけ命じられています」
「おもてなし、ねえ。それって俺が思う存分アンタを抱いてここを出ようとしたら、週刊誌の記者が待っているとかいそういうおもてなし?」
「そんなこと!」
ぶんぶん首を振って否定するけど、綾辻さんの追求は終わらない。
「……じゃあどういうことなのか早く教えろ。言っておくが、間違っても弁護士をだまそうなんて思うなよ。自分の身の破滅だからな」
じ、自分の身の破滅……。
綾辻さんの美しいお顔でそれを言われると背筋に寒気が走る。
今日のことって、私は何かの罪にあたるのだろうか。法律のことなんてさっぱりわからないけれど、もし訴えられたら祖父にも会社にも大きな迷惑が掛かってしまう。みーちゃんだって心配するだろうし……。
私はしおれた花のようにどんどん俯いていき、とうとう諦めの心に負けてしまう。
ここで認めてしまったら、祥平さんに合わせる顔がないけど……これ以上、下手な演技を続けるのも無理があるよね。
気持ちを落ち着かせるように長く息を吐くと、私は正面から綾辻さんの漆黒の瞳を見つめた。