sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「社の中に、あなたが顧問弁護士になることをあまりよく思っていない人がいて……その人に、頼まれたんです。私があなたに抱かれれば、社長が怒ってあなたを顧問にすることを考え直すだろうからって」


ぼかし気味の真実を伝えると、綾辻さんが不思議そうに聞いてくる。


「……社長が怒る。ってことは、アンタ社長の愛人か何かなのか?」


うう、やっぱりそこはぼかせないよね……。この人がおじいちゃんに告げ口してしまったらどうしよう。孫が好きでもない男性に色仕掛けしたなんて知ったら、怒る、というか悲しむよね……。

祖父の気持ちを勝手に想像して憂鬱になりつつ、私は観念して告白した。


「……孫です。才門勝美の」

「孫? ……でも、苗字が」

「母が、勝美の娘なんです。だから、結婚して“藤咲”に」


祥平さんに一度『綾辻弁護士に本名をあかしても大丈夫か』と聞いてみたけど、才門の名ではないから気にしなくていいと言われていた。

どうやらその通りだったようで、綾辻さんは今初めて知ったように「……なるほどね」と納得していた。

私を窓際に追い詰めていた手はスッと離れて、疲れたようにベッドに腰掛ける綾辻さん。

真実を知ったからか私を脅かすような雰囲気はなくなり、額に垂れる前髪をかきあげながら静かな調子で尋ねてくる。


「でも、孫ならなんで社長の意思に背くようなことを?」


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