sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
うーん……。私はしばらく黙って考え込む。
たとえばこのことが祖父自身の立場を危うくするなら引き受けなかっただろうけど、顧問弁護士を代えるくらいなら、という心境かな。
あとは、やっぱり……迷惑をかけた祥平さんの役に立ちたかったから。
「お付き合い……していた人に頼まれたんです」
「していた? なんで過去形なの」
「……お別れしたんです。私が、好きになれなかったから。だから、今回のことはその罪滅ぼしの意味もあって」
……って、私、なんでこんなこと綾辻さんに話しているんだろう。
決死のハニートラップも失敗したことだし、この部屋にとどまる理由はないはず。そろそろおいとましよう。
自分のふがいなさにため息をつきつつ、ベッドに座る彼の正面まで行きぺこりと頭を下げる。
「このたびはご迷惑をおかけしました」
そうして彼の顔も見ないまま、くるりと踵を返したけれど――ぐ、と手首をつかまれて、前に進めなかった。
怪訝そうに振り返った私を、綾辻さんが強い眼差しで射抜く。
「聞いてた通りだな」
……聞いてた? 誰に? 何を?
呆然としているうちに、つかまれた手首を引っ張られて、私はベッドに倒れ込む。
「……きゃ!」
な、なにするのよ……!
体勢を立て直そうと仰向けになった瞬間、ぎしっとベッドのスプリングが跳ねて、中途半端に上体を起こした私の目の前に、綾辻さんの美しい顔があった。