sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
正直にそう告げてしまいたいけれど、ちょうど快楽の波が最高潮を迎えつつある今の私は、それを受け止めるのに精いっぱいだった。
そんな余裕のない私を瞳に映して、綾辻さんが言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「今日この瞬間のこと、よく覚えていて。そしていつか、ちゃんと俺を愛したら、もう一度……」
“――俺を、罠にかけて”
内緒話のように耳元でささやかれ、私はこくこく頷いた。ただ、熱に浮かされた思考では、彼の言葉の意味をきちんと理解していなかったと思う。
綾辻さんはそんな私に慈しむような笑みを向け、優しいキスを落とした。
かと思うと、次の瞬間その甘やかさは一転して、凶暴になった腰の動きが私をとうとう天国へ連れていく。
「あや、つじ、さ……っ」
最後の瞬間、目の端に涙を浮かべて彼の名を呼び、逞しい背中にしがみついた。
それは恋人同士がする行動と同じなのかもしれないけれど、私たちの場合は違う。
ねえ、綾辻さん……気持ちゼロの私にキスをして、抱いて、あなたはむなしくないですか?
私は、いつもこの快楽の波が引いた後に、とてもむなしくなります。祥平さんのときだってそうだった。
あんなに強く抱き合ったのに、どうしてこの胸には“愛しさ”とか“切なさ”とかそういう強い感情の痕跡が残っていないんだろう――って。