sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
冗談にしても、ああいう芸能人とか著名人とどうにかなりたいと思うのって、すごく無意味だと思う。
口には出さずにそう言って祥平さんの腕をするっとほどき、寝室に移動しようとつま先を床につける。
けれど、同時にそのときぐいっと腕を引かれて、私はソファに尻餅をついてしまう。
祥平さんはそんな私の両肩を指が食い込むくらいにつかんで、見たことのない必死の形相で詰め寄ってきた。
な、なに? あなたの長所である優しさと余裕はどうしたの!?
「痛いよ……祥平さん」
「ふ、副社長からの指示なんだ……千那ちゃんを使って、あの弁護士を陥れるって」
意味が全くわからない。なんで副社長が出てくるの?
それに、私を“使う”って……?
「あの弁護士……今度うちの社の顧問になるんだ。なぜか彼を気に入っている、社長の独断でね。でも、副社長はそれを快く思っていない。だから、社長の孫であるきみに手を出すように仕向ければ……」
ああ……なんとなく筋書きが見えてきた。
つまり、社長である私の祖父が、勝手にあの弁護士を顧問にしようとしていて、副社長はそれを阻止したい。
その手段として副社長が目をつけたのが、社長の孫である私……ってわけか。
お気に入りの弁護士とはいえ溺愛している孫に手を出されたら、祖父も顧問の件を考え直すに違いない。
副社長にはきっとそんな思惑があるのだろう。