sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「いくら愛を説かれても、私は変わりません。それと、私は一度家に帰るので送っていただかなくて結構です。出社したら昨夜のことはきちんと報告しますので、きっと会うのもこれきりでしょう。……では、さようなら」
ひと息に言い切って、すぐに部屋の出口を目指して踵を返した。
まったく、変な弁護士と関わり合いになってしまった。そう胸の内で呟きながら。
綾辻さんが追いかけてくることはなく、私はワンピースの裾をひるがえしてホテルのロビーを抜けて、外に出た。
七月も下旬になり朝から暑いのはいつものことだけど、なんだか不快指数がいつもより高い気がする。
……きっと、綾辻さんのせいだ。これからしばらくは何かに苛立つたび、彼のせいにしてやろう。
完全に八つ当たりだとわかっているけれど、そう思わずにはいられなかった。
好きの感情がわからない私でも、嫌いの方ならわかる。綾辻さんは、まさにそれだ。
でも、私ってば彼にいろいろと恥ずかしい姿を見せてしまったような……。
昨夜の濃厚な情事の一部始終が脳内に蘇ってきて、慌てて首を左右に振る。
「……この記憶は抹消しよう」
呟くと同時に強く心に決めて、私は家に向かって早足気味に歩くのだった。