sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
こわごわ円美さんの様子を窺うと、殺人的に冷ややかな視線が注がれていたので、ぶるりと身体を震わせて私は綾辻さんに言う。
「あ、綾辻さん、テレビ出てる人ですよね? こんなところで誤解を招く発言するとリアルタイムでSNSにアップされますよ」
「……誤解? ではないけどまあプライベートを覗かれるのはいい気はしないか」
綾辻さんは周囲を見渡し、社食中に響く声で宣言した。
「あー、ここにいる社員の皆様にそんな常識のない方はおられないと思いますが、もしも今私の写真を撮ってどこかに載せたり、私の発言を公開された場合、肖像権、プライバシー権の侵害に当たる可能性がありますので、お気をつけてください」
彼が言い終わると同時に、食堂内が水を打ったように静まり返った。
さ、さすがだな……胸元に弁護士バッジを光らせてそんなことを言われたら、実際のところ法に触れていようがいまいが怖くて何もできないのが当たり前だもんね。
そんなことに感心しているうちに、食堂内は元のざわつきを徐々に取り戻していく。
「よし」と気を取り直したように呟いた綾辻さんは、再び私の方を向いて短く訊いた。
「千那。週末ヒマ?」