sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
うちの会社には派閥があって、社長派と副社長派がいがみあっているのは前々から知っていた。
私はそういうのに興味がないから、自分の祖父より副社長につく祥平さんを何とも思わないけれど、まさかこんな形で派閥争いに巻き込まれることになろうとはね……。
っていうか、祥平さんもこんなに簡単に私を差し出そうとするなんて。
私にこんなこと思う権利ないけど、彼にとっての私はその程度の女だったんだ。
少しの喪失感を覚えつつ、祥平さんに問いかける。
「……あの綾辻とかいう人が私に見向きもしなかったらどうするの?」
シナリオは理解したけれど、あまり現実的とは思えない。
私は容姿に特段コンプレックスがあるわけじゃないけど、かといって自信もない。
背中まで伸ばしたブラウンのストレートヘアにできる天使の輪と、肌の白さだけは羨ましがられるけど……。
顔は丸いし童顔で、背が低いから幼くみられることが多い。
そんな私が、あんなハイスペックな男性を落とせるわけがないでしょう。
「いや、千那ちゃんは女子高生みたいな顔して夜の方もなかなかだから大丈夫。なにせ僕だってそこにハマっちゃって――」
んなっ……何言ってるのこの人!
祥平さんが鼻の下を伸ばして語る途中で、私は突然の衝動に駆られて手のひらを振り上げていた。
そのまま祥平さんの頬を、思い切り叩く。