sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
そんな経緯で綾辻さんに私の携帯番号を知られてしまい、私は“あとで電話する”の“あとで”がいつかわからないから、ずっとスマホを気にしているというわけなのだ。
昼間のことを思い出したらまた気になってきて、裏返しにしたはずのスマホをひっくり返す。けれど表示される通知は明日の天気予報くらいなもので、彼からの連絡はない。
……いや、ないならそれが一番いいんだけどさ。
「ふふ。お嬢様、例の殿方からの連絡をお待ちなのですね」
みーちゃんはなぜか嬉しそうだけど、そんな風に言われるのは心外だ。
「え? いやだからそれは違うんだってば。私は彼を罠にかけただけなの」
「先日もお伝えしましたけど、愛は一日にして成らずですから、お嬢様の心がまだ追いついていないだけだと私は思いますけどね」
心が追いつくってなに? 私が綾辻さんを好きになるってこと? いくらみーちゃんが私のよき理解者でも、その点に関しては断固否定します!
「私は何日たっても変わらないもん」
口をとがらせ宣言する私に、みーちゃんはのんびり応える。
「そうですかねぇ。身体から始まる愛もありますよ? 私だって昔は……」
「なになに? みーちゃんの話聞きたい」
「もちろんいいですよ。あれはまだラブホテルのベッドが回転していた頃の話ですけどね……」
ベッドが、回転……? そんなアトラクション的な要素があったのか昔のラブホは。
みーちゃんの口から時々飛び出すひと昔前の流行に驚きつつ、私は彼女の話に耳を傾けた。