sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


な、なんで、綾辻さんが……!

視線の先の彼は片方の手をポケットに入れながら、冷静な視線で私たちを観察している。

早く助けてもらいたいけれど、綾辻さんに借りを作ると思うとなんだかな……。

複雑な心境で黙りこくる私に対し、声を上げたのは祥平さんだ。

私の身体からパッと離れて、悪びれる素振りもなく言ってのける。


「いえ。彼女の服が汚れてしまったので落とすのを手伝おうと。ね、藤咲さん」


……なんてしらじらしい演技。それにしてもこの場合、どう答えたらいいの?

ここで私が本当のことを言ったら、祥平さんはセクハラ上司の烙印を押されてしまう。解雇か左遷か減給か……程度はわからないけれど、それなりの処分が下るだろう。

でも、彼がこうなってしまったのは私が傷つけたせいでもあるのだ。怖かったしいやな思いをしたけど、結果助かったんだから、大ごとにしなくてもいいような気もする。

そうすれば、綾辻さんに借りを作ることもないし……。


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