sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「どうして嘘をつくんだ?」
それほど厳しい口調ではないけれど、責められているのは間違いない。
気分はさながら法廷の被告人だ。……私、被害者なのにな。
「嘘……じゃありません。私はセクハラなんかされていません」
彼から目を逸らした状態で、ぼそぼそと答える。
「あんな顔しといてよく言うよ。俺が来たとき全身全霊で“助けて”の表情だったけど」
痛いところをつかれて、内心ぎくっとする。
ううう、数分前の自分に、ドアから入ってくるのはこの弁護士だから助けを求めちゃダメと言いたい。
「そ、それは綾辻さんの思い込みでは」
だんだん言い逃れるのも苦しくなってきたけど何とか誤魔化す。
すると彼は再び深いため息を吐き、それからまた一歩私に近づいて。
――ふわり。
優しく包み込むように背中に腕を回されて、私は彼の纏うバニラの香りのなかに閉じ込められた。
「あ、あのっ……!」
なな、なぜ抱きしめる必要が……!? その行動の理由を説明して!
目を白黒させて動揺する私の耳に、綾辻さんがささやく。
「なんでアイツを庇うんだ? 理由を教えてもらえるなら、このことは口外しない」
「だから、あれはセクハラなんかじゃ……!」
「それ聞き飽きたし、説得力ゼロだから却下。……俺がおとなしいうちに吐いちゃった方が楽だよ? 本当はすごーく不機嫌だから、千那に何するかわかんない」