sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
な、何するかわかんないですと……?
その物騒な発言に反応して、ドン、と綾辻さんを突き飛ばす。彼は意外にもあっさりと私を手放し、少し距離の開いたところでなぜかくすくす笑っている。
なんなの? 不機嫌なんじゃなかったの?
「な、何がおかしいんですか」
「いや。さっきとは違う顔してるなぁって」
「さっき……?」
「今回は全身全霊で“ドキドキしてます”の表情ってこと」
は、はぁ……? 誰があなたなんかに!
確かになんだか鼓動が速くて顔の方に熱が集中している感覚もあるけど、それは綾辻さんが憎たらしいから怒りでそうなっているだけ。ドキドキ……なんか、してない。絶対。
あからさまにムッとしている私に気付いて、綾辻さんがちょっとだけ真面目な顔になる。
「ごめん、からかいすぎた。……とにかく、本当のことを話してほしいってこと。その先に関しては、千那の意思を尊重するって約束するから、頼む」
そんなに真剣なトーンで語り掛けられると、突っぱねづらい。
でもその条件なら、祥平さんの立場が悪くなることもなさそうだから、話しても問題ないのかな……。
ぐるぐる悩んでいる間に綾辻さんから「座ろうか」と提案され、結局彼と話をするほかに選択肢はなくなってしまった。