sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
ドキドキ
ソファの方に移動した私たちは一人分の間隔をあけて腰を下ろし、私はゆっくり一つずつ話し出した。
彼の名は岡田祥平。同じ経理部に所属する上司で、前に話した“元交際相手”でもあり、彼は綾辻さんのもとへ私を仕向けたことを後悔するほど、まだ私を想ってくれているらしいこと。
そして私の方にも彼を好きになれなかった罪滅ぼしの気持ちがまだ消えずに残っていて、今回の件に関してあまり事を大きくしたくないというのが本音だということ。
「……それでも、彼に触れられたことは、正直苦痛でした。付き合っている時だって気持ちはなかったはずなのに、どうしてあんなに嫌だったのかは自分でも不思議です」
膝の上に置いた手に視線を落としながら、真実を告白した私。
途中で口を挟んだりせず黙って聞いていた綾辻さんは、ひと通りの流れがわかると納得したようにうなずいた。
「なるほどね。千那が声を大にして“セクハラです!”って言いたくない理由はわかったよ。不本意だけど、今回の件は見なかったことにする。ただ、彼のことは要注意人物だと頭に入れておくけどね」
「ご理解いただきありがとうございます。では私はこれで」
短く会釈をしてソファから立ち上がろうとしたけど、綾辻さんはそれを制するように私の手首を引っ張った。
「そう焦るなって。俺は千那の疑問に答えようとしてあげてるんだからさ」
「私の疑問?」
怪訝そうな私を無理やりまたソファに座らせたところで、綾辻さんが口を開く。
「岡田祥平に触れられることが、前は嫌じゃなかったのに、今は嫌だ。……その理由、知りたいだろ?」
そりゃ、知りたいけど……なんで自分自身でもわからないことを綾辻さんが知ってるの。