sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
あからさまに疑いの目を向ける私をものともせず、彼が自信たっぷりに語ったその“理由”はこうだった。
「簡単なことだよ。千那に好きな人ができたんだ」
な……なにそれ。本気? 見当違いもいいところですけど。
私は一瞬ぽかんとして、それから冷めた口調で言い放つ。
「聞いて損しました」
「そう言うなって。でもそれなら説明がつくだろう。アイツに触れられたときの嫌悪感丸出しの顔と、俺が抱きしめた後の可愛い顔との違い」
言い終わると同時に伸びてきた手が、私の頬にそっと添えられる。
びく、と小さく身体を震わせた私を見て、綾辻さんは甘い微笑を浮かべた。
「ほら、それだよ。顔にはちゃんと“ドキドキしてる”って書いてある」
「そ、そんなわけ……」
口では否定しながら、彼の瞳の中を覗いてみると、そこに映る自分はなんとも言えない表情をしている。
困っているような、焦っているような、何かを期待しているような……なにこれ。こんなの、私の知ってる私じゃない。
「まだ、自覚がないならそれでもいい。でも、もう千那は恋の入口に来てるよ」
恋の、入り口……。私は今そこに立っているというの?
認めたくない気持ちと、今まで知らなかったその世界に飛び込みたい気持ちとが、複雑に入り混じる。