sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「入ったら……どう、なるんですか?」
おそるおそる尋ねた私に、綾辻さんは意地悪い笑みを向けてこう告げた。
「入ったら最後。あとはまっさかさまに落ちるだけだ」
……なんなのそれ。もっとメリット的なことを説明してくれるかと思っていたのに。
「そんなところ、入りたくない」
「大丈夫。……俺も一緒に落ちるから」
安心させるような口調で言われたって、それの何が大丈夫なのかわからない。わからないけど、でも……
綾辻さんも、道連れにしていいなら、それもアリ……なのかな。
私の口は気が付けば勝手に動いて、彼にこう頼んでいた。
「じゃあ、背中……押してください」
「うん。了解」
ゆっくり近づいてきた綾辻さんの端正な顔。やがて瞳が伏せられて、私の頬に触れている手が、残り数センチの距離をぐっと引き寄せた。
「ん――」
まだ入口、というだけあって、羽のように軽く優しいキスだった。
初めて出会った晩に何もかも飛び越えているはずなのに、今さらとても恥ずかしくて、驚くほど胸が高鳴る。
これが綾辻さんの言う“ドキドキしてる”ってやつなの……?