sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「も、もしもし」
『千那? 支度できてる? 今、家の前に着いた』
「わかりました! すぐ行きます」
『何焦ってるんだ? ……ああ、早く俺に会いたくてか』
違います! それは完全に自信過剰! と反論する時間すらもったいないので、私はすぐに電話を切るとリビングに戻って祖父とみーちゃんに声を掛ける。
「じゃあ、私出掛けてくるね! 晩御飯はいらないから」
「あ。ちょっと待ってくれ千那」
すぐに出て行こうとしたのに、祖父に呼び止められてしまった。
なんだろう、こんな出がけに。
立ち止まった私に近づいてきた祖父は、人差し指で額を搔きながら、言いにくそうに話した。
「どうだ。今年の盆休みは一緒に行かないか、墓参りに」
ああ……その話か。私の答えは毎年同じで、それを祖父もわかっているから、ここ何年かは聞いてくることすらしなかったのに、なんでまた改めて。
少しの煩わしさを感じつつ、私は小声で答えた。
「……行かない」