sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
雨の中を走り出した車は、一般道から高速のインターに入り、東京方面へと向かう。
「……ちょっと混んでるみたいだ」
途中、表示されていた電光掲示板を見て彼が呟いた通り、大きなジャンクションに差し掛かるところで渋滞にはまった。
けれど綾辻さんは特にイライラする様子もなく、車が完全に停車してしまったところで、こちらを振り向いた。
「時間かかりそうだし、千那のこといろいろ聞いてもいい?」
「私のこと? 別にいいですけど……」
「じゃあまず誕生日と血液型」
そんなの聞いてどうするんだろう。占いとか?
「……四月六日。おひつじ座のO型です」
「なんだ、もう過ぎちゃったんだな。一緒に祝えるのは来年か」
ああ、そういうこと……。そうやって残念そうにしてくれるのは、嬉しい。嬉しいけど。
「来年のことなんて、どうなってるかわからないじゃないですか」
私は前を見たまま、抑揚のない声で呟いた。
自分の中に、得体のしれない黒い雲のようなかたまりがあって、それが膨らんでくるのを感じる。
でも、それは今が初めてじゃない。……家を出る前、祖父にお墓参りのことを言われてから、モヤモヤと胸の中を漂い始めたのだ。
だけど綾辻さんは別に私の過去に触れたりしたわけじゃないのに、どうして?
胸が圧迫されたような苦しさを感じていると、隣から大きな手が伸びてきて、膝の上にある私の手にそっと乗せられた。